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【特集】消耗品のビットの耐久性アップが実現する選定ポイント
組み立てラインに欠かせない電動ドライバー。生産性を左右する電動ドライバーには、高効率の機種が選ばれますが、一方で消耗品である先端のビットは安価なものに流れがち... その耐久性についてはあまり注目されていません。しかし、実はビットの選定を見直し、耐久性を向上させることで、ネジ締めのトータルコストダウンにつながった例が多数あります。 この記事では、ビットの耐久性を向上させる刃先の選定ポイントと、実際の組み立てラインでのコストダウンの事例をご紹介します。
組み立てラインに欠かせないエアードライバー。生産性を左右するエアードライバーには、高効率の機種が選ばれますが、一方で消耗品である先端のビットは安価なものに流れがち… その耐久性についてはあまり注目されていません。しかし、実はビットの選定を見直し、耐久性を向上させることで、ネジ締めのトータルコストダウンにつながった例が多数あります。
この記事では、ビットの耐久性を向上させる刃先の選定ポイントと、実際の組み立てラインでのコストダウンの事例をご紹介します。
ビットの選定ポイントとは
ビットの耐久性を向上させるためには、刃先の「硬度」と「形状」の2つの選定ポイントがあります。それぞれのポイントについて解説します。
刃先の「硬度」を選定する
ビットの刃先硬度(熱処理硬度)を選定することで、耐久性を向上させます。
最適な硬度を選定するためには、実際のネジ穴やビットの状態をもとに、ビット折損の原因を探ることが重要です。
選定ポイント
- ① 刃先が摩耗している場合
刃先が摩耗している場合、カムアウト(ビットがネジの十字穴から浮き上がる現象)が発生していると考えられます。
カムアウトが頻繁に起こる場合は、刃先の硬度を高くすることで改善が可能です。 - ② ネジ穴がつぶれている場合
ネジ穴がつぶれていたり、ビットの刃先がねじれている場合、ビットの硬度がネジに対して低いことが考えられます。
刃先の硬度を高くすることで改善が可能です。 - ③ ビットの先端が欠けている場合
ビットの破片がネジ穴に刺さっていたり、ビットの刃先がチッピング(欠け)している場合、ビットの硬度が高すぎることが考えられます。
刃先の硬度を低くすることで改善が可能です。
刃先の「形状」を選定する
ビットの刃先形状を選定することで、ネジへのかん合を高め耐久性を向上させます。
ネジの十字穴の深さや寸法精度は、ネジの種類(木ネジ、タッピングネジ、機械ネジなど)や、頭部の形状(なべ、皿、トラス、シンワッシャーなど)によって異なるため、ネジに合わせた選定が重要です。
選定のポイント
- 一番精度が高いとされる羽根溝部の寸法を基準に、〈スタンダード/パワー/ハイパワー /ブラック〉の4種類から選定します。
家電などによく使われる安価なネジは、十字穴のばらつきが多く、ビット折損の原因になることも… ビットの折損が多い場合は、ビットの選定だけでなく、ネジの精度についても検討が必要となります。
ビット見直しによるコストダウンの事例
消耗品のビットですが、一日あたりいくらのコストがかかっているかは気になるところ。僅か数十円のコストダウンでも、年間でみると大きなコストダウンにつながります。
なかでも、冷蔵庫、エアコンなどの家電製品や、サッシ、エクステリアなどの組み立て工程で多く使われるタッピングネジは、ネジの締め付け時の反力が大きく、ビットの折損が多いネジのひとつ。ビットを見直すことで、大きなコストダウンが実現します。
エアコン室外機の組み立てをコストダウン
・品 目:エアコン室外機
・工 程:カバーの取り付け
・生産台数:3,000台/日
・使用ネジ:薄板タッピングネジ 4本/台(12,000本/日)
〈改善前〉
これまで単価180円の国産ロングビットを使用し、エアコン室外機のカバーを取り付け。
ビット1本あたり、平均65台(ネジ締め260本)の組み立てを行っていました。
〈改善後〉
ビットの硬度を見直し、単価200円のベッセル製〈ブラックB〉に変更。
ビット1本あたり、平均250台(ネジ締め1,000本)の組み立てが可能になりました。
ビット1本あたりの単価は、約110%アップしましたが、ビットの耐久性が約3.8倍に向上。
年間(実働20日×12ヶ月)で、約1,475,000円のコスト削減につながりました。
※ビットの製品単価は、一例(想定単価)として記載しています。
一例) | 製品単価 | 台数/ビット1本 | 締め付け本数 | ネジ締めコスト(1本あたり) | ネジ締めコスト(1日あたり) |
国産他社品 | ¥180 | 65台 | 4本(260本) | ¥0.69 | ¥8,308 |
VESSEL | ¥200 | 250台 | 4本(1000本) | ¥0.20 | ¥2,400 |
冷蔵庫の組み立てをコストダウン
・品 目:冷蔵庫
・工 程:ボディの組み立て
・生産台数:600台/日
・使用ネジ:樹脂タッピングネジ 8本/台(4,800本/日)
〈改善前〉
これまで単価140円の安価な海外製ビットを使用し、冷蔵庫ボディを組み立て。
ビット1本あたり、平均20台(ネジ締め160本)の組み立てを行っていました。
〈改善後〉
ビットの硬度を見直し、単価200円のベッセル製〈ブラックB〉に変更。
ビット1本あたり、平均55台(ネジ締め440本)の組み立てが可能になりました。
ビット1本あたりの単価は、約140%アップしましたが、ビットの耐久性が約2.8倍に向上。
年間(実働20日×12ヶ月)で、約484,000円のコスト削減につながりました。
※ビットの製品単価は、一例(想定単価)として記載しています。
一例) | 製品単価 | 台数/ビット1本 | 締め付け本数 | ネジ締めコスト(1本あたり) | ネジ締めコスト(1日あたり) |
他社海外品 | ¥140 | 20台 | 8本(160本) | ¥0.88 | ¥4,224 |
VESSEL | ¥200 | 55台 | 8本(440本) | ¥0.45 | ¥2,160 |
今一度、ビットを見直してみよう
ビットの耐久性向上は、折損したビットの金属廃棄量の削減につながり、SDGsが掲げる「つくる責任つかう責任」にも大きく貢献します。
ネジに合わせて適切なビットを選定しているか?コスト削減のため、安価なビットを使い回していないか?今一度、消耗品のビットを見直し、ネジ締めのトータルコストダウンにつなげてみましょう。