【特集】ベッセルの作業工具へのこだわり〈ボールポイントレンチ編〉

私たちベッセルのものづくりの歴史は、手廻しのドライバーからスタートしました。その開発の原点は「手」、ドライバーとともによく使われるレンチのひとつ「ボールポイントレンチ」にも、その原点が息づいています。
アメリカ生まれのボールポイントレンチは、さまざまなメーカーから発売されていますが、部品の組み立てやメンテナンスでは、狭い箇所でも素早くボルトを回すことができる、ベッセルのボールポイントレンチが活躍しています。
この記事では、作業性向上に貢献するベッセルのボールポイントレンチの特徴と、そのこだわりについてご紹介します。

ボールポイントレンチとは

六角レンチはその名の通り、断面が六角形の形をした工具ですが、その先端は、一般的なフラットな形状と、丸い形状の2種類があります。その先端の丸い六角レンチが「ボールポイントレンチ」です。
ボールポイントレンチは、もともとアメリカで考案された六角レンチです。ボルトに対してレンチを傾けながら差し込むことができ、レンチをまっすぐ挿入できない狭い箇所での作業や、周りに障害物がある場合にとても便利です。

関連ページ

【基礎知識】六角レンチの種類と使い方、サイズの見方
【製品情報】本締めボールポイントレンチ

ボールポイントレンチの作業性を決める「傾き角度」

一般的なボールポイントレンチは、先端のボールが六角穴の中心付近におさまるように設計されています。そのため傾き角度を大きく設計すると、首部のくびれが細くなり強度が低下してしまう問題がありました。

首部が細いと障害物とぶつかった際に、テコの原理でポッキリ折れてしまうことも少なくありません。海外製のボールポイントレンチでは、首部の強度を保つため傾き角度を犠牲にしていることも多く、いかに「傾き」と「強度」を両立するかが、開発の課題となっていました。

傾きと強度を両立する、ボール形状へのこだわり

部品の組み立てやメンテナンスでは、作業性が重視されます。しかし精密部品や自動機などの装置は、ボルトが奥まった箇所にあることが多く、倒れやすく早回しがスムーズにできるレンチが必要とされていました。
首部の太さをそのままに、レンチの傾き角度を大きくできないか？そこでベッセルが注目したのが、先端のボール形状です。

ベッセルでは、ボールポイントレンチの新しいボール形状を考案。先すぼみにすることで、傾けたときに、先端がボルト穴から浮き上がるように設計しました。これによって駆動位置が、六角穴の入り口付近におさまり、首部の太さをそのままに、傾き角度を大きくすることに成功したのです。
首部の強度が上がることで、ボルトの本締めも可能になり、2019年に「本締めボールポイントレンチ」として発売を開始しました。
本締めボールポイントレンチは、六角穴に干渉しにくいため、レンチが障害物に接触しても自然と抜けやすく（抜け出し効果）、レンチの折れや六角穴への噛み込みもなくなります。
また首部が六角断面のため、レンチを傾けたままボルトを保持することができ、ボルトの取り付け、取り外しの作業性が向上します。

従来のボールポイントレンチとの比較

ボールポイントレンチに求められるスペックは、①傾き角度、②ボール強度、③ヘックス強度、④早回しのスムーズさ、⑤ネジの保持、⑥抜け出し効果の6点です。
従来のボールポイントレンチとの比較は下記の通りです。

高強度のもうひとつのポイントは「EX鋼金」

本締めボールポイントレンチの材質には、大きな衝撃にも耐える「ビット鋼材」を用いています。
ベッセルでは、ビット鋼材にさらに長年の経験による熱処理を行うことで、材料特性を最大に引き出し、硬度が高く耐磨耗性に優れた「EX剛金」として採用しています。

現場にあわせた、使いやすさへのこだわり

ベッセルのボールポイントレンチは、鉄工所や金型工場のような、油や切粉が飛び散る現場から、組み立て・電気工作などのクリーンな現場まで、幅広いシーンで愛用されています。その理由は、現場にあわせた2種類のレンチホルダーにもあります。
レンチをコンパクトに収納するレンチホルダーは、必要なサイズをすぐに取り出したり、レンチの紛失を防いだりと、作業性の向上に大きく役立ちます。

金属加工の現場に

機械整備や鉄工所、金型工作などの現場では、レンチをはじめとしたさまざまな工具を使い分けます。
本締めボールポイントレンチの9本組ホルダーは、場所を取らないコンパクト設計で、工具箱の中でも邪魔になりません。カラフルなホルダーで、他の工具に紛れず取り出しやすくなっています。

生産ラインの現場に

製品や自動機の組み立て、電気工作などの現場では、サイズ別に色分けされた「レインボールレンチ」が便利です。レインボールレンチの9本組ホルダーは、強力なマグネットで自動機や定盤に固定でき、スタンドとして活用することができます。
またマグネットは、レンチに着磁と脱磁を行う「マグネタイザー」としても使うこともできます。磁気の影響が心配なセンサー類近くの作業では「脱磁」、ボルトの落下が心配な狭い箇所では「着磁」することで、作業性が大幅に向上します。

六角レンチのスタンダートを目指して

ベッセルでは、インチのサイズ展開をはじめ、奥深いところに届くロングタイプや、短軸サイズが1/2以下の短軸仕様、トルクス（ボールエンドトルクス）など、六角レンチのラインナップを広げています。
また、耐久性に自信があるから「永久保証」。通常の使用範囲でレンチが折れた場合、同サイズのレンチと交換し、現場の期待に応えています。

使う人あってこそのこだわり。今後も現場を支える工具メーカーとして、六角レンチのスタンダードを目指し、さらなる使いやすさに挑戦してまいります。