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2023.11.02
【基礎知識】静電気対策の床工事と床材の種類・選定について
目次
私たちの生活に身近な「静電気」。静電気は、セーターを脱いだりドアを開けるときに“パチっ”とくる自然現象ですが、ものづくりの現場では、不良品の発生や電撃によるケガなどトラブルの原因にもなっています。
静電気対策は、樹脂成形から半導体実装まで、今やものづくりに欠かせないものになっていますが、静電気対策床材による床工事を行うことで、工場まるごと静電気対策を行うことができます。
この記事では、工場全体の静電気対策を行う床工事と、床材・施工方法について解説します。
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静電気対策の床工事で使われる床材グレード
静電気対策の床工事で使われる床材には、導電性グレード・帯電防止性グレードといった、各種グレードが使われます。どちらも静電気を蓄積しない特性を持っていますが、床工事を行う際は、用途に合わせて選定する必要があります。
導電性グレード
電気を通す性質のことを「導電性」といいます。導電性グレードは、導電性の樹脂を使い、電気をゆっくりグランドに逃がす特性を持っています。静電気障害を嫌う場所に最適です。
〈導電性グレードの用途例〉
- 半導体、電子機器、組み立て工場、製薬工場などのクリーンルーム・病院、無菌室など
帯電防止性グレード
物質が電荷を帯びていることを「帯電」といい、帯電している状態では静電気が蓄積していきます。
帯電防止グレードは、帯電を防止し静電気の蓄積を防ぐ特性を持っています。
〈帯電防止グレードの用途例〉
- 電子機器組み立て工場、コンピュータールーム、銀行の電算センター、オフィスなど
導電性グレード・帯電防止性の違いは?
導電性グレード・帯電防止性は、抵抗値の違いで区別されています。
ビニル床で比較した場合、CDリウム〈CD/CDR〉(導電性グレード)の抵抗値は106~107Ω。それに対し、ロンスタック〈LS/LSR〉(帯電防止性グレード)の抵抗値は108Ωです。
電気抵抗値が大きいほど、静電気が発生・蓄積しやすい環境になってしまうため、静電気が発生しにくい床材を選びたい場合は、導電性グレードがおすすめです。
静電気対策床材の種類について
静電気対策の床工事で使われる床材の種類には、主にシート・タイル・塗床(ぬりゆか)があります。
〈床材の種類〉
導電性ビニル床シート
導電性に優れた導電性グレードのシートです。一般的な帯電防止床材を超える高度な静電気対策ができます。
半導体工場やクリーンルー ムなど、とくに静電気障害を嫌う場所に適しています。
- 関連製品
- 導電性ビニル床 CDリウム(ブルー)
帯電防止ビニル床シート・タイル
静電気の発生を防ぐ、帯電防止性グレードのシート・タイルです。ホコリの付着やコンピュータの誤作動を防止します。
コンピュータルームやエレクトロニクス工場など、帯電防止性が求められる施設に適しています。
導電性塗床
優れた導電性・帯電防止効果が得られるエポキシ系導電床です。耐薬品性・洗浄性・水密気密性を合わせ持つシームレスな床で、清掃が容易です。
既設の塗床材を撤去することなく、導電床に改修することができます。
- 関連製品
- 導電性塗り床(グリーン)
シート・タイル・塗床の違いは?
シート |
温湿度の変動が少なく継ぎ目も溶接処理されるため、傷みが少ないのがメリットです 重量物(リフトや台車)が通らない環境に最適です |
---|---|
タイル |
部分的に張り替えしやすいため、施工時の設備移設などの手間が少なく済みます 傷んだ箇所の部分補修がしやすく、設備や工程の配置換えが多い場合に最適です |
塗床 |
重量物(リフトや台車)の通過にも耐えることができます 新設工事や敷きなおしでは、施工時の乾燥に時間がかかりますが、部分補修は比較的楽に行うことができます |
床施工のタイミングは?
静電気対策の床工事は、下記のようなタイミングで行われます。
新設工事 |
新工場の施工時や、工場内に新たなクリーンエリアを設立する際の工事です |
---|---|
部分補修 |
設備移動やリフトによる痛みの補修、エリアを拡張する際の工事です |
敷きなおし |
表面の傷みが見られる際の全面補修や、塗床を床シートに張り替える際の工事です |
静電気対策床材の選定について
シート・タイル・塗床をお選びの際は、以下を目安に選定ください。
〈選定の目安〉
静電気 | 導電性 | CDリウム、アートフロア |
---|---|---|
帯電防止 | ロンスタック、セイデンタイルC | |
重量物 | リフト・台車 | アートフロア |
歩行・軽量 | CDリウム、ロンスタック、セイデンタイルC | |
清掃性 | 良い | CDリウム、ロンスタック、アートフロア |
埃だまり | セイデンタイルC | |
コスト | 高い | CDリウム、アートフロア |
安い | ロンスタック、セイデンタイルC |
〈物性一覧〉
静電気対策の床工事の流れ
静電気対策の床工事は、施工面積にもよりますが、1〜2日程度で完了します。(事前の打ち合わせや資材準備は別途必要です)
シート・タイル・塗床ごとのかんたんな工事の流れについてご紹介します。
ビニル床(シート)工事の流れ
1)施工前処理
新設下地の場合
コンクリート/モルタル下地のチェックを行います。
最後に清掃して、除去した異物や粉塵やゴミを取り除きます。
改修施工の場合
既にシート・タイル・塗床などの仕上げ材が施工されている場合は、既設の仕上げ材を除去します。既設の下地が剥がせない場合は、そのまま施工することもできます。
2)シート施工
- 施工する場所の確認と採寸を行い、床シートの割付を決めます。
(導電床シートの場合は、アース板設置位置を確認します) - シートを墨線に沿って割り付けし、不要な部分を粗切りします。
(導電床シートの場合は、アース板、ジョイント部に導電テープを張り付けます) - シートをめくり接着剤を塗布し、オープンタイムをとります。
(導電床シートの場合は、アース板、ジョイント部の導電テープの離形紙を剥がします) - シートを手前から順に被せてエア抜きをし、100ポンドローラで入念に圧着します。
- 熱風溶接機を用いて、溶接棒で溶接処理を行います。
シートは巻いた状態で保管されているので、巻きだして広げて養生しくせ取りを行います
3)点検・メンテナンス
電気工事の資格者が、アースターミナルへの接続を行います。また、必要に応じて帯電防止性ワックスを塗布します。
(導電タイプの場合は、電気性能の確認を行います)
ビニル床(タイル)工事の流れ
1)割付(墨出し)
部屋の中心点の割り出しを行います。
2)貼り込み
壁面は通常ゆがんでおり、側面から貼るとずれてしまうため、中心から貼り込んでいきます。タイルには方向性があり、市松貼り・流し貼りによって貼っていきます。
市松貼り |
タイルを交互に敷くことで、目地を目立たなくする貼り方です |
---|---|
流し貼り |
タイルをすべて同じ方向に敷くことで、つなぎ目をわかりにくくする貼り方です |
導電性塗床工事の流れ
- 補修/下地処理
- プライマー塗布
- 下塗り(コテ塗り)
- 中塗り(コテ塗り)
- 仕上げ塗り(コテ塗り)
- 硬化養生
塗床工事では、下地の乾燥と強度に注意が必要です。乾燥時間が十分でないと、塗膜のはがれの原因になります。また強度が低いと、リフトで床が傷み塗膜のはがれの原因になります。
また下地にクラックがあると工事ができないため、下地は平滑な面に仕上げます。(その際の研磨粉の除去も重要になります)
床工事後の導電率の測定について(IEC61340-2-3)
床工事後の床材の導電率の測定方法(IEC61340-2-3)についてご紹介します。
点間抵抗(Rp)の計測方法
床工事後の床材の導電率の測定方法(IEC61340-2-3)についてご紹介します。
- 試験する試料の表面を上にして、試験支持台の上に置く
- プローブを試料端から50mm以上離れた位置に置く
- プローブ間の距離を250mm以上離した状態で計測する
- 10Vの電圧を加え、15秒後に読み取り記録する
(表示された抵抗値が1.0×106Ω以上であれば、100Vの電圧を加え15秒に読み取り記録する)
グラウンド抵抗(Rg)の計測方法
床工事後の床材の導電率の測定方法(IEC61340-2-3)についてご紹介します。
- 試験する試料の表面を上にして、試験支持台の上に置く(試料にはグラウンド可能接続点を設ける)
- プローブを試料、またはグラウンド可能接続点から50mm以上離れた位置に置く
- 計測器の片方のリードをプローブに、もう片方のリードをグラウンド可能接続点に接続する
- 10Vの電圧を加え、15秒後に読み取り記録する
(表示された抵抗値が1.0×106Ω以上であれば、100Vの電圧を加え15秒後に読み取り記録する)
静電気対策床工事の用語集
VOC対策品 | VOCは揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds)の略称。塗料、印刷インキ、接着剤、洗浄剤、ガソリン、シンナーなどに含まれるトルエン、キシレン、酢酸エチルなどの物質≒有機溶剤です。 平成16年5月に大気汚染防止法が改正され、揮発性有機化合物(VOC)の排出規制が実施されました。 VOC対策品では、厚生労働省指針の13物質(トルエン、キシレン等)を意図的に使用していません。 |
---|---|
RoHS対象物質不使用 | RoHS指令に基づき、2006年7月1日以降、指定値以上の下記物質を含む電子・電気機器をEU加盟国内で販売することができなくなっています。 そして、電子・電気機器の製造業者は、意図せぬ含有を防ぐために、製造現場で使われる工具や設備にも規制物質が含まれないものを使用するようになっています。 2019年7月22日からは、10物質に関して指定値が決められ規制されます。 |
F☆☆☆☆ (Fフォースター) |
Fフォースターは、ホルムアルデヒドの放散量が0.12mg/l 以下の製品でのみ取得できる、ホルムアルデヒド等級の最上位規格を示すマークです。ホルムアルデヒド等級はJIS(日本工業規格)、JAS(日本農林規格)でホルムアルデヒドの放散量に応じて、F☆☆☆☆、F☆☆☆、F☆☆、表記なしに分けられています。 ホルムアルデヒドは「シックハウス症候群」を引き起こす原因物質とされていますが、F☆☆☆☆であれば、建築基準法の規制を受けずに使用可能です。 |
JIS K 5970 (建物用床塗料) |
JIS K 5970では、建物の屋内床面に塗装する床塗料について、各種品質やホルムアルデヒド放散等級の検査方法と表示が規定されています。 |
IEC 61340-4-1準拠 | IEC 61340-4-1では、床仕上げ材および施工床の「電気抵抗の特定応用」のための標準的な試験方法を規定しています。測定装置、電極、ほか治具、雰囲気や試験手順が決められており、点間抵抗や接地間抵抗の測定方法と基準が書かれています。 |
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