【JIMTOF特集】EVの軽量化にかかせない樹脂のゲートカットを効率化

CO₂排出削減に向け加速する、EV（電気自動車）の開発競争。2015年、国連サミットでSDGsが採択されて以降、EV開発の現場では自動車メーカーだけでなく、電機メーカーやベンチャー企業など、異業種からの参入が相次いでいます。
この特集では［JIMTOF2022 国際工作機械見本市］の開催にあわせ、今後あらたにEV向けのニーズが増えていく「アルミダイカスト」「樹脂成形」に関する効率化の事例を、2回に分けてお送りします。

〈第1回の記事はこちら〉
【JIMTOF特集】EVの軽量化にかかせないアルミのバリ取りを効率化〈vol.1〉

樹脂部品によるEVの軽量化

EVは、これまでのエンジンやトランスミッションがなくなる一方、大容量のバッテリーを積むため車体が重く、ガソリン車と比べ、航続距離（1回あたりの充電／給油で走行できる距離）の短さが課題です。
電費向上がEV普及のカギとなるなか、自動車部品メーカー各社では「部品の軽量化」が大きな開発テーマになっており、軽量化に向け、アルミや樹脂などの軽量素材へのシフトが進んでいます。

EVの軽量化ではアルミが注目されていますが、EVのさらなる軽量化にかかせないのが、強度や耐熱性に優れた高機能樹脂です。樹脂の比重はアルミよりもさらに軽く、金属ほどの強度を必要としない部品に採用することで、さらなる車体の軽量化が実現します。
樹脂の活用では、CFRP（炭素繊維強化樹脂）が期待されていますが、量産車用としてはまだまだコストが高く、リサイクル性の観点から、ポリプロピレン・ポリウレタン・POM・ABSなどの汎用樹脂のインジェクション成形のニーズが増加しています。

インジェクション成形におけるゲートカットの課題

これまで自動車部品のインジェクション成形は、生産の合理化を図るため、金型内のゲートカットが主流でした。しかし近年では、金型設計にかかる時間や金型コストの観点から、サイドゲートによるゲートカットを採用する企業が増えています。
従来、バンパーやパネルなど大型の内装部品の成形には、600t～1300tクラスの大型インジェクションマシンが使われますが、トラバース（取り出し機）による搬送時の揺れが大きく、サイドゲートによるゲートカットの場合、揺れが収まるまで待機する必要がありました。揺れたままゲートカットをしてしまうと、エアーニッパーの刃がうまく入らず製品を傷つけてしまうことも…
現場では増えつつあるEV向け樹脂部品の成形を、いかに効率よく行うかが課題となっていました。

ゲートカットの作業効率を「スライドエアーニッパー」で向上

自動車部品などの断面積の広いゲートは、待機ジグにニッパーを取り付けて、待機場所でカットする方法が一般的ですが、エアーニッパーをチャック盤に取り付ることで、効率化・精度向上につなげることができます。そこで採用されているのが、ブラケット型の「スライドエアーニッパー」です。
スライドエアーニッパー〈GT-NBシリーズ〉は、切断時に大きな衝撃が加わる断面積の広いゲートカットに最適なエアーニッパー。チャック盤に直接取り付け、揺れの少ない取り出し直後にゲートカットを行うことで、待機時間を大幅に短縮することができます。
さらに、LMガイド付きの高精度タイプを使うことで、さらにゲートカットの精度を向上させることができます。

また フロントピラーなどの内装部品のフィルムゲート（薄いフィルム状のゲート）の場合、クランプ刃（先曲がり）を取り付け、Wスライドさせるのがおすすめです。
チャック盤への取り付けの際は、取付台数による重量を考慮した上で、トラバースの設計を行う必要があります。

エアーニッパー〈GT-NB20〉のブレードについて

自動車内装部品などの大型の成形品には、刃開きが大きいブレードがおすすめです。
またガラス繊維が入った強化樹脂や、PEEKのような高機能樹脂には、超硬チップをろう付けした別作ブレードの対応も可能です。

・樹脂ストレートロング刃 〈N20AJL〉
・樹脂用クランク刃 〈N20AH〉
・樹脂用横向き刃 〈N20AML／Ｎ20AMR〉
・樹脂用クイキリ刃 〈N20AE〉
・樹脂用R付き刃 〈N20LAB／N20AA／Ｎ20AB〉

EV向け樹脂成形に役立つ各種エアーニッパーを出展

この記事では、EVの軽量化によって増加している、樹脂成形品のゲートカットについて紹介しました。
2022年11月8日より6日間に渡って開催される［JIMTOF2022 第32回日本国際工作機械見本市］では、現場の生産性向上に焦点をあて、EV向けインジェクション成形品のゲートカットに役立つ各種エアーニッパーを出展しています。ブレードのカスタマイズによって、生産性向上を実現した事例も多数あります。樹脂成形のゲートカットでお困りの際は、ぜひベッセルのブース（東京ビックサイト 西ホール Ｗ3020）までご来場ください。