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自動車用モータ製造における巻線機の生産性向上例【オートモーティブワールド特集】
近年、自動車の電動化にともない急増しているのが、小型モータの需要です。 自動車には、パワーウインドウやワイパーの動作、パワーステアリングによる運転支援に加え、シート位置の調整や電動パーキングブレーキなど、自動車の安全性や快適性を向上させるため、多くのモータが使用されています。 この特集では、2025年1月に開催される[第17回 オートモーティブワールド]の開催にあわせ、小型モータの需要拡大とともに増えている、巻線機の生産性向上に関する改善事例をご紹介します。
近年、自動車の電動化にともない急増しているのが、小型モータの需要です。
自動車には、パワーウインドウやワイパーの動作、パワーステアリングによる運転支援に加え、シート位置の調整や電動パーキングブレーキなど、自動車の安全性や快適性を向上させるため、多くのモータが使用されています。
この特集では、2025年1月に開催される[第17回 オートモーティブワールド]の開催にあわせ、小型モータの需要拡大とともに増えている、巻線機の生産性向上に関する改善事例をご紹介します。
自動車に使われる小型モータとトレンド
自動車では、モデルによって200個以上もの小型モータが搭載されることもあり、さらに消費者の高級志向や、CO2排出削減によるEV・HV・FCVの推進によって、その市場は拡大しています。
〈自動車に使われるモータの例〉
エンジン・冷却関連に使われるモータ
エンジンおよび冷却装置に使用されるモータは、自動車の基本性能を支える重要な役割を果たしています。
近年では、高効率化や小型化が加速しており、燃費向上や環境負荷低減の観点からもその技術的進化が注目されています。またモータ自体の耐久性や省エネ性能も、一層重視されています。
- 燃料ポンプ用モータ
- オイルポンプ用モータ
- 冷却ファン用モータ
- ウォータポンプ用モータ
- スタータモータ
- オルタネータ
ステアリング・安全装置関連に使われるモータ
ステアリングや安全装置に使用されるモータは、運転者の操作性向上や安全性確保のために欠かせません。これらのモータには、高速応答性や信頼性が求められ、特に自動運転技術の進化と共にその重要性が高まっています。
- 電動パワーステアリング(EPS)用モータ
- ステアリングロック用モータ
- 横滑り防止装置(ESC)用モータ
- ABS用モータ
- 電動パーキングブレーキ用モータ
ドア・外装関連に使われるモータ
ドアや外装部品で使用されるモータには、小型化、静音性、耐久性が求められます。さらに、電動開閉技術の進化によって、操作性や利便性も大幅に向上しています。
- パワーウインドウ用モータ
- ドアミラー用モータ
- ドアロック用モータ
- サンルーフ用モータ
- ハッチ開閉用モータ
- ヘッドライト調整用モータ
シート・快適装備関連に使われるモータ
車内の快適性や利便性を向上させるモータは、精密な動作制御や省エネ性能が必要です。シートの調整や快適装備には、細やかな動作と高い信頼性が求められています。
- パワーシート用モータ
- シート調整用モータ
- シートベルトプリテンショナー
- シート冷却用モータ
- モニター開閉用モータ
ワイパー・エアコン関連に使われるモータ
ワイパーやエアコン用モータは、車両の快適性と安全性に直結する重要な部品です。静音性や耐久性、さらには省エネ性能の向上が求められています。
- ワイパー用モータ
- ブロワファンモータ
- エアコンダンパー用モータ
- 空気清浄機用モータ
その他の駆動関連に使われるモータ
特殊用途や補助的機能を担うモータは、自動車の性能向上や利便性の向上に貢献しています。これらのモータは、多様なシステムに組み込まれ、高度な制御技術や信頼性が求められています。また、エネルギー効率や環境対応も重要な課題として進化を続けています。
- 電動吸排気バルブ用モータ
- 可変動弁/可変ノズルターボ用モータ
- ETB(電子制御スロットル)用モータ
- パワーアンテナ用モータ
モータ製造で求められるのが、巻線機の生産性向上
小型モータのトレンドは、「軽量」「コンパクト」「高出力」「高効率」です。自動車の安全性・快適性の向上のため、より高性能な小型モータが求められていますが、そこで重要となるのが、巻線機の産性向上です。
巻線機は、モータコアの製造に欠かせない装置ですが、生産現場では、自動車や電子機器向けの小型モータの需要拡大にともない、生産プロセスの改善が求められており、より高い生産性と、装置の小型化が求められています。
巻線機は、巻取りスプールやテンション装置など、複雑な要素部品で構成されており、生産プロセスの改善には様々なアプローチがありますが、その中でベッセルがご提案するのが、銅線のカット工程に使われるニッパーの見直しです。
ベッセルのエアニッパーについて
エアーニッパーは、圧縮空気を動力源としたエアツールです。樹脂や金属の切断、穴あけ、かしめなどの作業を、強力なエアの力で効率的に行うことができ、ものづくりの現場で広く使われています。
ベッセルのエアニッパーの大きな特長は、巻線機などの装置向けに、豊富なラインナップがあること。自動化装置にあわせた形状選定や、ニッパーの刃のカスタマイズができ、巻線機への組み込みに最適です。
エアニッパーによる巻線機の改善事例
ベッセルのエアニッパーによる、巻線機のカット工程の改善事例をご紹介します。
巻線機の生産性向上 | 傷をつけずに銅線をつかめる |
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薄いフープ材でも切り残しがでない | |
太い銅線でも切り残しがでない | |
細い銅線でも噛み込みが起きない | |
巻線機の小型化 | 狭い場所でもニッパーの刃が干渉しない |
狭い場所でもニッパー本体が干渉しない |
巻線機の生産性向上が実現
切傷をつけずに銅線をつかめる
課題
銅線(φ2.8~4.5mm)のカット工程。従来、カット後の銅線をエアーチャックで保持していましたが、滑り止めのついたチャック爪で銅線をつかむと、エナメル線に傷がついてしまうことがありました。ストレートのチャック爪でも、銅線がずれて傷がついてしまいます。
改善
銅線の径に合わせ、くぼみを設た保持用のブレードを専用設計。銅線が接触する部分を面取りし、さらに銅線をつぶさないように保持力を減圧弁で調整することで、傷の問題を解決します。
- 組み合わせ例
- 本体:GT-NS20
別作ブレード:N20DI[***]
薄いフープ材でも切り残しがでない
課題
真鍮フープ材(4×0.6mm)のカット工程。ワークが薄くて柔らかいため、従来のニッパーではカットしきれず、皮一枚残ってしまう課題がありました。
改善
薄くて柔らかいワークのカットは、刃と刃の間に材料が薄く残ってしまうことがあります。刃が行き違いになる「ハサミ形状」のブレードを別作することで解決します。
- 組み合わせ例
- 本体:GT-NS20
別作ブレード:N20VHAB[***]
太い銅線でも切り残しがでない
課題
太い銅線のカット工程。ニッパーの刃が摩耗すると、隙間ができてしまい切り残しの原因になります。そのため、超硬ロウ付け刃で耐久性を高めていましたが、ブレード交換のコストも課題になっていました。
改善
太い銅線でも安定カットができる、切断能力の高いエアニッパー 〈N50タイプ〉を選定。さらに刃の耐久性とメンテナンス性を考慮し、2枚の超硬ブレードを上下に取り付けた刃を別作し、交換可能にすることで解決します。
- 組み合わせ例
- 本体:GT-NR50
別作ブレード:N50**[***]
細い銅線でも噛み込みが起きない
課題
細い銅線のカット工程。銅線は柔らかいため、ブレードの摩耗や挿入位置が違った時などに噛み込みが発生しやすく、ラインストップの原因になっていました。
改善
刃の隙間に切り残した銅線が挟まると、ブレードが開かなくなってしまい、機械が止まってしまいます。刃を開くブレードスプリングを強化し、噛み込んでも強制的に開かせることで解決します。
- 組み合わせ例
- 本体:GT-NS30
別作ブレード:N30VHAB****
巻線機の小型化が実現
狭い場所でもニッパーの刃が干渉しない
課題
銅線のカット工程。装置内が狭くニッパーの刃が入らないため、独自に研磨し細らせて使用。その結果、強度が低下してしまい、ニッパーの曲がりや刃のずれが発生する課題がありました。
改善
刃開き調整付エンドキャップを利用することで、ニッパーの刃の開き幅を狭くすることができ、狭い場所でも刃が干渉することがありません。
- 組み合わせ例
- 本体:GT-NS/NRシリーズ
オプションパーツ:刃開き調整付エンドキャップ
狭い場所でもニッパー本体が干渉しない
課題
細い銅線のカット工程。装置自体が小さいため、小型のニッパーを選定しているが、それでもニッパー本体が装置に干渉してしまい配置できない課題がありました。
改善
標準オプションの横向きブレードで、狭い装置内でも干渉せず、安定したカットができるようになります。
- 組み合わせ例
- 本体:GT-NS3
オプションブレード:N3BM****
小型モータをはじめ、自動車部品製造に役立つ各種製品を出展
この記事では自動車向け小型モータのトレンドと、エアニッパーによる巻線機の改善事例についてご紹介しました。
2025年1月22日より3日間に渡って開催される[第17回 オートモーティブワールド(EV・HV・FCV技術展)]では、自動車部品製造の生産性向上に焦点をあて、今回ご紹介したエアニッパーをはじめ、「静電気除去」「塵埃除去」「組立」などの改善・効率化を図る各種製品を出展しています。
自動車部品製造の生産性向上でお困りの方は、ぜひベッセルのブース(東京ビックサイト:東4ホール E39-21)までご来場ください。