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2022.06.02
【関連知識】カムアウトの発生原因とカムアウト防止のヒント
カムアウトとは、プラスのネジを締め付ける際に、ビット先端がネジの十字穴から浮き上がって外れてしまう現象です。
カムアウトは、ネジをなめてしまう原因となったり、ビットや十字穴をつぶしてしまうこともあり、生産性の低下につながります。また十字穴から飛び出たドライバーが、製品や部材を傷つけてしまうことも… さまざまなトラブルを引き起こしてしまいます。
効率的なネジ締め作業には、カムアウトの原因を把握し、事前に対策を講じることが重要です。
カムアウトの発生原因
カムアウトは、プラスドライバーを回す力が、刃先のテーパー角度(26.30°)に沿って斜め上方向に逃げてしまうことで起こります。
〈カムアウトの主な原因〉
- ドライバーを押し付ける力が少ない
- ドライバーが垂直に差し込まれていない
- ドライバーが奥まで差し込まれていない
- ドライバーとネジのサイズが合っていない
カムアウトを防ぐには〈7:3の法則〉
カムアウトを防ぐには、適切なサイズのドライバーを選定するとともに、ドライバーをネジに対してまっすぐ奥まで差し込み、回転軸がぶれないようにしっかりと押しつけながら回すことが重要です。
一般的に「押す力」と「回す力」のバランスは、7(押す力):3(回す力)が最適とされています。
カムアウトを防ぐヒント
カムアウトは、「押す力」と「回す力」のバランス以外にも、使用するビットやドライバー・ネジを見直すことで、解消することもできます。現場の課題に合わせて、改善していくことが重要です。
ビットを見直してカムアウトを防ぐ
ビットは消耗品のため、刃先が摩耗してカムアウトが起こりやすくなってしまうことがあります。摩耗によるカムアウトが頻繁に起こる場合は、刃先の硬度を高くすることで改善できます。
またカムアウトが起こりやすい足場の悪い場所での締め付けには、ビット側面のギザ部がねじに食い込む、「ギザビット」などのカムアウト防止ビットもあります。
ドライバーを見直してカムアウトを防ぐ
押す力と回す力のバランスは、ドライバーのグリップ形状によっても左右されます。
グリップがボール形状の「ボールグリップドライバー」を使用することで、押す力:7、回す力:3の安定した締め付けが実現し、カムアウトの発生を防止することができます。
またボールグリップドライバーは、押す力が一定のため、脚立に立っての作業や高所作業も安全に行うことができます。
ネジを見直してカムアウトを防ぐ
設計段階で、ポジドライブやトルクスなどのトルクの伝達(駆動効率)の高いネジを選定することで、現場でのカムアウトの発生を防止します。
カムアウトの課題解決事例
カムアウトによる現場の課題と、カムアウトを防止する解決事例をご紹介します。
斜め打ちによるカムアウトの発生を防ぐ
従来、ツーバイフォー工法のコーススレッド(長い木ネジ)のネジ打ちは、斜め打ちが多く、カムアウトによってネジ頭をつぶしてしまうことがありました。そこで採用されているのが、ビット軸を細く絞った「サキスボトーションビット」です。
インパクトドライバーの打撃による振動を、ビットのくびれ部分が吸収することで、ビットの跳ねを防止し、カムアウトを防ぐことができます。
ビットの変形によるカムアウトの発生を防ぐ
従来、カバー工法のサッシ枠の取り付けは、上向きや横打ちなどの不安定な体勢で作業することが多く、芯ブレによってビットが変形してしまい、カムアウトが頻発していました。そこで採用されているのが、硬度とじん性を兼ね備えた「剛彩ビット」です。
最高硬度62HRcのダイハード鋼の採用で、ビットの応力集中による変形を防止し、カムアウトを防ぐことができます。
カムアウトでネジ頭をつぶしてしまったら…
カムアウトでネジ頭をつぶしてしまった場合、無理にネジを外すことは避けましょう。機械設備や材料を傷つけてしまう恐れがあり、さらに作業効率も落ちてしまいます。
カムアウトによってつぶれたネジや、なめたネジの取り外しには、「ネジはずしビット」などの専用工具の使用がおすすめです。